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今回は、お風呂・温泉医学の専門家として知られる医師・早坂信哉さんに、入浴がもたらす健康効果や正しい入り方についても解説していただきました。
旅でも日常でも活用できる、「癒やしの時間のつくり方」をご紹介します。
医師が解説｜入浴が心と体に与える「癒やし」の効果とは
監修者：医師、All About お風呂・温泉の医学ガイド 早坂 信哉さん
お風呂・温泉の正しい情報を伝える、温泉療法専門医。
自治医科大学医学部を卒業後、地域医療に従事。博士（医学）を取得し、浜松医科大学准教授や大東文化大学教授などを経て、現在は東京都市大学人間科学部教授。
また、一般財団法人 日本健康開発財団 温泉医科学研究所の所長として、温泉や入浴に関する医学的な研究・啓発活動にも力を注いでいます。
忙しい日々が続く中、温泉やお風呂は「癒やし」の場として幸福感を与えてくれます。なんとなく体によさそう、というだけでなく、最近では温泉や入浴に関する医学的効果も研究されてきています。
温泉や入浴がもたらす健康面でのメリット
入浴の健康作用は医学的にいくつかにわけて考えています。特に「温熱・水圧・浮力・清浄」の4つが重要です。
この中でも特に温熱作用が最も重要で、体が温まると血管が拡張して血流がよくなります。血液が全身に栄養分や酸素を運び、二酸化炭素や老廃物を除去してくれるので、血流をよくすることが健康維持にとても大切です。温まると筋肉の緊張が緩み痛みも緩和します。
また、水圧によって下半身が適度に締め付けられるので、足先にたまりがちな血液が心臓に押し戻されてむくみや血流が改善します。
肩まで湯に浸かると浮力によって体重が1/10になり、そのぶん体を支える必要がなくなるので筋肉がリラックスできます。
体の汚れを落とす清浄作用はシャワーにもある作用ですが、逆にいうとシャワーにはこれ以外の健康作用はありません。
ここ数年で特に生活習慣としての入浴の健康効果を医学的研究で明らかにすることができてきました。私たちの研究グループでは、毎日湯船に浸かることで将来、要介護状態になるリスクが29％減、抑うつ状態となるリスクが24％減、認知症となるリスクが26％減となることを発表してきました。前述のような4つの健康作用が毎日繰り返されることの結果だと考えています。
特に温泉はおうちのお風呂をより強力にしたもの、と考えることができます。硫黄泉や塩化物泉など泉質ごとに異なる成分効果がありますが、どの温泉も温熱作用がおうち風呂より強力です。
そのほか、温泉地への訪問は違った土地に行くことで得られる解放感や素晴らしい絶景、大きな湯船などによる「転地効果」もあり、ストレス軽減効果も得られます。環境省の「新・湯治」での調査でも、日帰りや1泊の温泉滞在でもストレスの軽減や疲労回復などが認められました。
正しい入浴法でリラックス効果を最大化
リラックス効果を得るためには湯の温度が重要です。38～40℃程度のぬるめの湯で入浴することで自律神経のうちの副交感神経が優位になり、自律神経のバランスが整い、心身のリラックスが実現します。
特に40℃が適温で、ほどよく体が温まり、事故のリスクも少なく、10〜15分の全身浴で十分な温まりと効果が得られます。
就寝より90分前に入浴しましょう。入浴後は血管が拡張した状態が続くため、熱が体外へ放出されやすく、一旦上がった体温が自然に下降します。これが質のよい睡眠を促す効果につながります。
忙しい現代人にこそ「湯の時間」が必要な理由
最近は風呂キャンセル界隈などといわれて、若い方を中心にお風呂に入らない風潮も生まれています。
しかし、交感神経が過剰に働きがちな私たちにとって、入浴は手軽に副交感神経を刺激し、心身を休息モードへ切り替える重要なスイッチとなります。
また、自宅の日常から切り離された温泉地では、自然環境や非日常空間に身を置く「積極的ぼんやり」が可能であり、それ自体がストレス解放に寄与します。
自宅のお風呂でも十分効果が得られる！
必ずしも温泉である必要はなく、自宅の浴槽でも十分に癒やし効果が得られます。浴室の照明を白熱灯色にして少し暗くするとよりリラックスにつながりますし、お好みの入浴剤の利用で温熱作用が高まります。
たとえば、炭酸系入浴剤には血管拡張効果があり血流がよくなるので、より疲労回復やリラクゼーションを促します。
温泉やお風呂は、温熱や水圧、浮力のほか、血行促進や筋緊張解消、自律神経のバランス改善をもたらし、心身に深い癒やし効果を与えます。
特に忙しい現代人にとって、湯に浸かる時間は「意識的な休息」のスイッチです。自宅でも同様の効果を得られるため、ぜひ日常に「湯の時間」を取り入れてみてください。
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